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Interview

レコメンデーションチームを立ち上げたPMが振り返る、メルカリのディスカバリー体験のこれまでとこれから

メルカリAIチームの古澤智裕(@furufuru)は、メルカリ入社後の3年間で、PM・エンジニア・スクラムマスター……とさまざまなポジションを経験しながら、一貫してメルカリのディスカバリー体験の改善に携わってきたそう。そんな彼に、メルカリのレコメンデーションチームの立ち上げから現在に至るまでの歩み、そして今後取り組みたいことまでを教えてもらいました。

プロフィール

古澤智裕(@furufuru)| Product Manager
データサイエンスとソフトウェアエンジニアリングの楽しさに出会い、いつの間にかITの世界へ。大学院卒業後は図書館情報学をバックグランドとして情報検索や情報推薦のプロダクト開発に従事。2019年より株式会社メルカリに入社し、データサイエンスチームにて検索評価に取り組む。その後レコメンデーションチームの立ち上げを経て、現在はProduct Managerとしてプロダクト改善を推進している。

学生時代から一貫して取り組んでいるのは、「情報をいかに整理し、使いやすくするか」ということ

──古澤さんが現在取り組んでいることについて教えてください。

メルカリのコアの体験である、購入・出品体験を改善するチームに所属しています。その中で、私は特に購入体験の改善に取り組んでいます。

お客さまが商品を購入するにあたって、どのように欲しい商品と出会うか?を考えると、最も多い行為は検索です。検索は「欲しいものを思い浮かべたお客さまが、メルカリ内でそのアイテムを探して見つけ、そして買う」という経路ですね。

検索以外だと、そもそも新たな購買ニーズを見つけたり、購買ニーズをもとに特に苦労(=検索)せずに商品を見つけたりする「ディスカバリー体験」の改善もしています。なんとなくメルカリを開いたら、興味があったり、購入を検討したりしているアイテムが出てくる。商品を探しているうちに、他に気になる商品を見つけて、そちらを買う。このような体験が、我々の定義するディスカバリー体験です。

ディスカバリー体験を改善するにあたって強力な手段がレコメンデーションとなります。
現在、レコメンデーションでは、面白い商品情報を紹介する「コンテンツ」、解釈可能な商品のまとまりである「トピック(=検索条件)」、お客さまが実際に購入する「アイテム」の3つの単位をコントロールし、お客さまに推薦しています。

古澤智裕(@furufuru)
2019年の入社から一貫してメルカリのレコメンデーションに携わっている

大学時代は図書館情報学に取り組んでおり、学問を通じて「どうすれば大量の知識や情報を収集保存し、様々な人が便利にそれにアクセスできるようになるか」ということを研究していました。学生時代から今までのキャリアを振り返ってみると、一貫して「大量の情報をいかに整理し、使いやすくするか」ということに取り組んでいるように思いますね。

学生時代は司書の道に進むことも考えましたが、エンジニアやデータサイエンティストのインターンを始めたところ、ものづくりやデータ活用に強く興味が湧き、大学卒業後はリクルートでデータサイエンティストの道を選びました。前職のリクルートは様々なライフイベントを通じて多くのカスタマーとの接点を持つ企業のため、データを眺めているだけでも興味深かったです。ただ、データはそこに在るだけでは意味がなく、いかに活用するかということに意義があることも痛感しました。そこから検索・推薦という技術の深堀りをはじめました。

──検索と推薦の違いを教えてください。

私たちは「こういう情報がほしい」と感じた時、なんらかの形でアプリなどを通じてキーワード等の質問を投げかけますよね?出てきた結果をながめて欲しい情報を入手します。こうした一連の流れを「検索」と呼び、この体験を実現する仕組みを検索システムと呼びます。
一方で、何らかの形でキーワード等の入力をしなくても、すでにあるお客さまのデータを活用してサービス側から情報を提供することもできます。お客さまが能動的に質問等をしなくても情報を提供できる仕組みを推薦システムと呼んでいます。検索と異なり、「推薦」は体験ではなく、サービス提供者の手段を指す言葉となります。
この検索と推薦を上手く作ることは、サービスを使いやすくすることに繋がりますし、最終的に自分が作りたい「様々な人が知識や情報に簡単にアクセスできる」世界に近づけるなと考えています。

さまざまなポジションを行き来しながら推薦システムの改善に取り組んだ日々

──なぜメルカリでのポジションに興味を持ったのでしょうか

前職の同僚がメルカリで検索体験の改善に取り組んでおり、お誘いを受けたのがスタートです。当時メルカリのユーザー数もどんどん伸びており、勢いがあったため、いろんなデータを活用した検索技術の深堀りができるのでは?という思いから転職を決意しました。

入社後は現行の検索システムの評価から取り組みをはじめました。検索機能に限りませんが、あらゆるサービスは作るだけではなく、作った機能の評価サイクルを共に回していくことが改善には必要です。

例えば、我々のサービスで検索がうまくいっている状態は「ほしいもののキーワードを入れると、ドンピシャなアイテムが見つかり、購入できる」という一連の体験が作れている時です。逆に検索が上手くいっていないと、お客さまがあるアイテムを探していても、キーワードで上手く辿り着けなかったり、検索一覧に関連度が低いアイテムが多く表示されていたり、という状態になります。検索の成功と失敗を定義し、評価を繰り返しながら、検索チームはどうすれば良い検索が実現できるか試行錯誤していました。

その後は、メルカリのレコメンデーションチームを立ち上げました。実はチームを組成する前から、ひっそりと推薦システムのプロトタイプを作っていたのですが、会社としても推薦システムに力を入れていく方針となり、PMとしてチームの立ち上げをサポートしました。しばらく経った後、PMとして@akisがチームに入ってくれ、私はエンジニアに戻りました。

エンジニアとして開発を進める中でチームとして上手く開発体制が作れていない、という課題感も見えてきたため、エンジニアとして働きながらスクラムマスターとして組織の開発体制の整備も進めました。しばらくして組織として上手くまとまりができ、レコメンデーションチームとしても成果が出てくるようになったのですが、当時PMが人材不足だった背景もあり、またPMに戻りました。こうしてみると一貫して推薦システムには関わっていますが、役職はPM、エンジニア、スクラムマスター…と行き来していますね。

レコメンデーション施策がGMVに貢献できるようになるまでの歩みを振り返る

──これまでの様々なキャリアの中で、壁にぶつかることはなかったのでしょうか。

実は、レコメンデーションチームとして、上手く売上に貢献できるようになるまでは時間を要しました。現在のシステムになる前から、ホーム画面に並ぶアイテムは、お客さまの過去の行動から推薦したものを出していたのですが、見た目はただアイテムがずらっと並ぶタイムライン形式だったんですよね。その後、推薦システムのコンポーネントの種類を増やし、直近の行動履歴に基づくおすすめのキーワードやカテゴリを表示するようになり、初めて大きく売上が伸びました。ただアイテムを推薦するだけではなく、そのアイテムが推薦されている理由を表示したり、より深堀りしやすくできるようにコンポーネントの機能を定義したりすることで、お客さまにとって分かりやすくなったのだと思います。


メルカリのホーム画面の変遷

関連記事:誰ひとり「同じじゃない」ホーム画面を──メルカリが“他社に比べて難解”なパーソナライゼーションに挑む理由 | mercan (メルカン)

この時期、ホーム画面は見た目のUIも大きく変化しているのですが、同時に背景のシステム改修も進みました。工数がかかっていたホーム画面の機能開発をショートタームで対応できるように、クライアントで表示する内容をほとんどバックエンドで操作できる形に作り替えました。以前から「システムをモジュール化することで、バックエンドの変更だけでホーム画面がいろいろ切り替えられるといいよね」と構想していたのですが、実際に開発・導入されたのは、2020年ごろからでした。

──今後さらにメルカリで挑戦していきたいこと、やりたいことはありますか?

推薦システムでは、今は比較的単純なロジックしか使えていないので、もっと様々な技術を活用して、高度な課題を解いていきたいです。推薦システムのためのデータ活用の基盤整備など、まだまだ取り組めていないことはたくさんあります。色々なロジックを考えることが好きな方がいらっしゃればぜひ一度お話させてください!

メルカリは、数多くのお客さまに利用いただいており、高トラフィックなサービスであるため、大規模なサービスの運用経験がある人の方が勘所がつかみやすいかもしれません。ですが、分からないことがあっても、挑戦を前向きに楽しめる人と、一緒に働きたいです!

後編では、PM・エンジニア・スクラムマスター……とさまざまなポジションを経験した彼が、メルカリで働く中で大事にしてきたこと、またメルカリ特有の組織カルチャーについて教えてもらいました。]

プロフィール

Product Manager

古澤 智裕

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大学院卒業後、図書館情報学をバックグランドとして情報検索や情報推薦のプロダクト開発に従事。2019年5月より株式会社メルカリに入社し、検索評価やレコメンドシステムのプロトタイプ開発に取り組む。その後レコメンデーションチームの立ち上げを経て、現在はプロダクトマネージャーとしてディスカバリー体験全体を改善するような開発の推進をしている。

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