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メルカリAIチームの研究「Personalized Promotion Decision Making Based on Direct and Enduring Effect Predictions」が KDD2022 1st Workshopに採択されました
概要
データマイニングの国際会議であるKDDの、1st Workshop on End-to-End Customer Journey OptimizationにMDSチームのJie Yang, Yilin Li, Deddy Jobsonによる研究が採択されました。本ワークショップは、カスタマージャーニー全体でのユーザー体験向上をテーマとしています。
発表内容のポイント
Personalized Promotion Decision Making Based on Direct and Enduring Effect Predictions
今回の発表についての主な貢献は下記の通りです
- 顧客の直接的効果および永続的効果をターゲットとしたプロモーションの意思決定のフレームワークを提案する。このフレームワークは、直接効果予測、インセンティブ配分決定、ビジネスインパクト評価から構成される。
- 顧客直接効果および顧客永続効果(CDEE)モデルを提案し、各顧客の直接購入傾向および永続購入額の予測を行う。
- CDEEモデルを弊社における2つのプロモーションキャンペーンでベンチマークと比較し、有意に優れたパフォーマンスを達成する。
研究の背景
Eコマース市場において、マーケターは顧客との関係を維持しながら、消費者を望ましい行動に導くため、CRM(顧客関係管理)戦略として、さまざまなタイプのプロモーションを実施しています。メルカリでも、一般的なマーケティング戦略としてプロモーションを活用しています。
お客さまのニーズにより応えるために、パーソナライズされたプロモーションが必要とされており、昨今の研究コミュニティーでもプロモーションのパーソナライズは注目を集めているテーマです。購買予測を応用し、プロモーションの意思決定の最適化なども研究されています。直接購入確率のモデリングと最適化、ビジネス上の利益をもたらすことが分かっていますが、まだまだ改善の余地もあります。
まず、プロモーション経由での購買が完了した場合でも、収益への貢献度は異なります。収益の最大化を目指すためには、購買確率だけでなく、購買金額も考慮する必要があるからです。
次に、プロモーションは購買行動を誘発することができますが、その1回限りとなってしまうことが懸念されます。通常、プロモーションは早い段階での購入や買い置きを引き起こす可能性があるため、プロモーション後の購買の落ち込みは広く観察されます。長期的な顧客エンゲージメントを構築し、顧客ロイヤルティを高めることを目的としたプロモーションを行うためには、プロモーション後の期間についても、その効果を考慮する必要があります。
研究概要
本研究では、プロモーション期間中と期間後の収益の観点から、特にスコアが高いお客さまをターゲットとするため、お客さまの直接的反応と永続的反応をモデル化し、プロモーション意思決定のフレームワークを提案しました。直接反応はプロモーション期間中の顧客の反応に対応し、永続反応はプロモーション期間後のお客さまの反応に対応しています。我々のフレームワークは、直接的反応と永続的反応の予測、インセンティブ配分の決定、ビジネスインパクトの評価から構成されています。
我々は各顧客の直接購買性向と永続的購買量の予測を提供する顧客直接効果・永続的効果(CDEE)モデルを提案しました。
このモデルは、インセンティブ配分問題を定式化し、キャンペーンコストを予算内に抑えつつ、永続的購入額の合計を最大化する、お客さまにとって最適なインセンティブの種類を選ぶことを目的としています。
このモデルの効果推定のために、ランダム化比較試験(RCT)データを用い、ビジネス指標にバイアスを配慮した評価アプローチを適用したところ、我々の方法をメルカリでの2つのプロモーションを用いたベンチマークと比較し、モデル評価とビジネス指標の両方で有意な結果が得られました。
MDS Teamについて
MDS(マーケティングデータサイエンス)チームでは、統計学、機械学習、数学的最適化を用い、マーケティングキャンペーンの効率を向上させることを目的としています。